偽島転がり隊

～28日目　3匹の日記より～

2人の女の子は、目をつむってじっとしとる。
まるで寝てるみたいに…、でも寝息も聞こえんくらい静かで。
何が起こったんか、ウチにも分からへんの。


ウチらは、大きな木があったから近づいただけなんよ。
お腹も空いてて、喉も渇いてて、
水辺があったから、お休みしようて思って。

そしたらこの子達が居て、ウチらに襲い掛かって来たの。
何も言っても聞いてくれない。まるで初めから、ウチらの事を見てないみたい。
……ビーバーさん時と、同じみたいに。


ウチの手の中にあるんは、水色の果実。
とっても瑞々しくて、水が固まったみたいな綺麗な実。
何でコレを持っとるのか、ウチには分からへん。
何でこの子達が、眠ってるのかも分からへんの。

でも今、この子達は眠っとるの。
とっても静かに、しずかに。


大きな木の根元で眠る女の子達に、近づこうとしたんよ。
でも…、サっちゃんが近づけさせてくれなかった。

サっちゃんはただ、「死んでないから大丈夫。」って言うだけ。
近づいてもいないのに、何で分かるのかも聞かせてくれない。
サっちゃんが何を知ってるのかも、聞かせてくれない。

なぁサっちゃん、ウチは何をしたの？
ウチは、どうしたら良かったん？

……分からへんよ。











私はすぐに、気をうしないました。
とても、こわかったから。


青い髪のお姉さんが、たくさんの水を出してきて。
私は泳げなくて、おぼれました。
とってもくるしかったです。


目がさめたら、水はなくて、私はぶじでした。
お姉ちゃん達が、助けてくれたのですか？

だけどお姉ちゃんは、2匹ともこわい顔をしてました。
そんな顔を見ると、私もこわくなりました。


どうして、青い髪のお姉さんは、私に水をかけるの？
どうして、お姉ちゃんたちは、つらそうな顔をしてるの？

私は、とてもこわかったのに。
とても、こわかったのに。

お姉ちゃん達の顔をみても、
私のこころは、あたたかくなりません。


私はいまでも、こわいままです。

こわいまま、です。











宝玉の守護者は、目をつむってじっとしている。
まるで眠っているように…、でも寝息も聞こえないほど静かで。
彼女達は、寝ているわけじゃない。
ましてや死んでいるわけでもない。

ただ、次の挑戦者達を待ち続けているだけ。


宝玉


この島へ招待された人間は、皆それを求めている。
そしてこの水色の果実こそが、水の宝玉。

この島に宝玉が隠されている事は知っていた。
誰かがそれを使って、人を集めた事も。
誰もがそれを求めて、争っている事も。

だけど、私達には関係が無い事だと思ってたの。


水の宝玉を守護する2人の女の子。
彼女達は延々と冒険者達と戦い続け、そして宝玉を与え続ける。
大きな大きな大木に、無数に生った水色の果実。
それを護ると言いながら、それを勝者へと与え続ける。

…そしてアルマにも与えられた。


私達は島の外から招待された冒険者たちとは違う。
昔からこの島に棲んでたってだけの原住動物。
この島で起こっているさまざまな事件も、誰かの陰謀も。
全ては蚊帳の外、私達には関係ない。

関係がないはずだったのに…。


…アルマは巻き込まれてしまうと言うの？



アルマが　人間　だから。



イヤだ、そんなのイヤだっ！
巻き込まないで…、アルマを巻き込まないでっ…。

アルマを失いたくない、ずっと私達と、動物達と居て欲しい。
その為に、私には何が出来るの？
私は、アルマを護り続けることが出来るの…？


ねぇアルマ、私は何のために、あなたの側に居るの？

……分からないよ。