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2024/04/30 15:01 |
ひとつの結末~前編~
島は告げる、その終わりを―


【secne.1】
~おわりの はじまりの きもち~

しまが、とざされるのだと、ききました
だれからきいたのか、わかりません
だけど、だれもがしっていました

わたしも、しっていました

わたしたちのしまが、とざされることを



「島が…閉ざされる…?」


わたしたちはとつぜんに、それを知りました。
どうして?それは、わかりません。
でも、こころのなか、わたしの想いが、それが真実なのだといっています。


「起こっちまうモンはしゃあねぇべ、どうにもなんねぇ。」
「…ま、待ってよ…私達、まだ何も知らないのに…!何も知らないまま…終わってしまうの?」
「終わるんじゃねぇべ、閉ざされるんだ。ぁー、たぶん【隔離】っつぅことだべ?」
「もぅ、どっちだって良いわよそんなのっ!!ねぇアルマ、どうしよう…!」
「………んー。困ったねぇ~…。」
「なにのんびり構えてんのよ、アンタはぁっ!?」


おねえちゃんたちのお話、わたしにはむずかしいけど。
でもわたしにもわかります。
きっとそれは、おこってしまうことなんだって。
とめられなくて、とめちゃいけないことなんだって。


「何か…方法は無いのかな。…ねぇ?」
「つってもなぁ…。えらい人に聞いてみるしかねぇんでねぇ?」
「偉い人?…そもそもルーニって、誰から送り込まれたスパイだったの?」
「す…、スパイじゃねぇだっ、ただの監視だぁ監視っ!」
「…それって同じじゃない。」

「ぎゃわぁ~?」
「スパイってのはね、ミィちゃん。料理にかけると辛くてひぃ~ってなるアレの事やよ。」
「ぎゃぉ~!」
「それはスパイスだからぁっ!!」


サチおねえちゃんとルーニおねえさんは、言いあらそってるけれど。
あんまり、おこっているようすじゃなくて。すこし、こまったようすです。
わたしも、いっぱいいっぱい考えたけど、何も思いつきません。
アルマおねえちゃんは、…ちょっと、ふしぎなようす。
サチおねえちゃんとルーニおねえさんを見る瞳が、なんだかふあんそう。


「ぎゃわぁ…?」
「………ん?どしたの、ミィちゃん?ウチの顔面白い?えへへ~。」


わたしが、おねえちゃんを見ても、いつもの笑顔で返してきます。
でも、わかるんです、わたし。おねえちゃんが、ふあんそうだって。
どうしたのかな、とてもしんぱい。わたしも、ふあん。


「アルマー、ミィー!とりあえず森に戻ろう、大人の動物に話聞いてみようよ。」
「だなぁ~、子供だけでこんなトコまで来るからいけねぇんだべ。」
「アンタだって子供じゃない、ルーニ!」
「おんめぇらとは仕事の質が違うんだぁ、尊敬すりゃえぇべ!」


元気に言いあらそいながら、おねえちゃんたちが歩いていきます。
アルマおねえちゃんも、わたしを向けて手をさしだしてくれました。
その手をぎゅっとにぎって、いつものようにおててをつないで歩きます。

「ぎゃわぁ…。」

いつのまにかわたしは、アルマおねえちゃんのその手を、つよくつよく、にぎっていました。
いたかったらごめんね、おねえちゃん。



【Secne.2】
~真実と 現実からの 逃走~

島の1階の森
こいつらの故郷だべ
そろそろ真実っつぅもんを知らなきゃなんねぇ

恨むんだったら、オラ以外にしてくんろ?
おめぇに恨まれたんじゃ寝つきが悪ぃべ



森へと帰り着いたオラ達を待っていたのは、やっぱりあの動物だったべ。


「おう、帰ってきたか、アルマ。」
「鹿親分!」


嬉しそうに、アルマジロが走り寄って行く。
威風堂々、そんな態度で森の中に佇む鹿親分、すげぇ偉い動物なハズなんだども…、あのアルマジロっ子にとっちゃあ、兄だか父みたいなモンらしいべ。
そんな様子を暫く眺めてから、ハチっ子が声を掛けた。


「…あの、鹿さん、この島が”閉ざされる”事についてお聞きしたいのだけど。」


その声を聞いて、はしゃいでいたアルマジロもピタっと止まる。
アルマジロ、ハチ、ミニドラ、3匹の不安気な視線を受けて、鹿親分がゆっくりと喋りだす。

「あー…なんだ、説明するのも面倒だがな。」

随分面倒くさそうな態度だっぺな、まぁいつもあんな感じだども。

「その前に聞いておくか。お前達はどうやって”それ”を知った?」
「どうやって…って、自然と頭の中に。皆そうじゃないの?」
「あぁ、島の動物は島の意思を感じ取れるからな。質問を変えよう、アルマはどうやって”それ”を知った?」
「………。」
「なら代わりに答えようか。お前は周りの、サチ達の態度を見てそれを知った。そうだろう、アルマ?」
「………それは………。」


アルマジロは黙ったまま、顔を俯けた。鹿親分の言葉を否定はしない。
んまぁ、そうだろうなぁ。なんつったって、アイツはこの島の動物じゃなくて……

「…鹿さん。確かにアルマは、”人間”かもしれない。それは私だって理解してる。…だけど、それでアルマを追い詰めるのは止めて、私が許さない。」

鹿親分の言葉を止めたのは、意外な事にハチっ子だったべ。アルマジロも驚いた様子で見つめてる。
鹿親分はやれやれと肩を竦めて…つぅか鹿の肩ってどんなかは分かんねぇけど、そんなニュアンスで告げる。

「ん、そうか。なら単刀直入に聞くぜ。アルマ、お前も自分が人間である事は理解しているな?」
「うん…、理解しとるよ。サっちゃんとも、話し合ったから。」
「ならお前は…、島が閉ざされるその前に――」


――人の世界へ行け


鹿親分は、そう告げた。
島が閉ざされるっつぅ事はだ、外の世界とは隔離されるって事だな。もう出入りも出来ねぇだろ。
それは誰にだって分かる事だべ、おそらく人間であるアルマジロにも。
人の世界へ行っちまえば、…帰ってこれる保障なんてどこにもねぇ。

アルマジロもハチも、絶句している。ミニドラは、よく分かってなさそうだども、とりあえず不安そうだ。
オラは何となく予想してたどもな、やっぱ人と動物じゃ相容れねぇんかなぁ…。


「オイこら鹿野郎ッ、何勝手な事言ってやがんだコラァッ!突き殺すぞ!」
「お、大鳩兄ぃさんっ!?」


そんな最中、突然の乱入だったべ。強大な風圧と羽音、灰色の翼が森へと降下して来ただ。
この動物は…大鳩だべな。アルマジロの兄っぽい動物だったハズだぁ。
その大鳩はアルマジロの眼前に着地して、大きく翼を広げ、鋭い眼光を鹿親分へと向ける。


「てめぇの目的はアルマを利用してジャングルの王に仕立て上げる事だろうがっ、矛盾してんじゃねぇぞコラ!」
「相変わらずせっかちだな大鳩。鹿族の目的は俺にとっても絶対だ、俺は一度も矛盾した事はないぜ。」
「だったら何で、アルマを追い出そうとすんだよコラっ。それで何になるってんだ、あぁッ!!」
「なぁ大鳩よ、ジャングルの王の素質とは何だ?」
「………あぁ?強い事じゃねぇのか?」
「なら簡単だな、俺達動物は人以上に強くはなれない。ジャングルの王になれるのは人間だけだ。」
「だからっ、アルマを鍛えて来たんだろうがッ!」
「だが、ただの人間じゃ駄目だ、あいつらは動物を見下す。必ずだ。誰も王になる資格は無かった。」
「はぁッ!?アルマが俺達を見下すとでも言ってんのかてめぇっ、いい加減にしろや!」


二匹で激しい討論を繰り広げてんなぁ、大鳩は今にでも飛び掛りそうな勢いだべ。
対して落ち着いた様子の鹿親分は、相手を気にせずゆっくり喋るだけだぁ。

「…だが、アルマも駄目だ。アルマにはまだ、人としての経験が足りない。」

そう言ってアルマジロを見る。品定めでもしるかのような視線で。


「人間達が島に来た、何かと理由をつけてアルマを送り込んだ。理由はなんだって良かったさ、アルマが人と接し、”人として”成長すれば良かった。
 だが結果はどうだ。アルマは確かに成長した、体も、心もだ。だが…それは人としてか?違うな、アルマ?」

「ウチは……違う。ウチは確かに、人間やけど。それでも、人間として振舞った事は無いよ、これからもずっと。ウチはどうやっても、人としての成長なんて出来ひんの…。鹿親分、…ごめんなさい。」


アルマジロが素直に謝る、心の底からだ。そして一緒に、ハチも頭を下げた。
人より動物を選んだのは、あのハチっ子の影響だろうからなぁ。…本人達が気付いてるかはしんねぇけんど。
その反応は予想してたんだろうな、鹿親分は特に慌てる様子もなく、…とんでもない事を口走ったべ。


「…ああ、そうだな。それが最大の誤算だったさ。だが俺の目的はジャングルの王を探し出す事、それは変えられない。すまないな、アルマ。力尽くでお前を、人の世界へと連れ出させてもらうぜ。」


鹿親分の言葉と共に、多数の気配。森一帯を動物達が取り囲んでいた、まさに力尽くで―つぅこった。
大鳩がアルマジロ達を庇うように前に出る、けれど1匹じゃ鹿親分を牽制するのがやっとだ。


「アルマ、島が閉ざされるのは明日の夕暮れ時だ、それまで逃げ切ればてめぇの勝ちだ。分かってんな!?」
「で、でも大鳩兄ぃさん、ウチらだけじゃっ…!」
「何言ってやがんだ馬鹿!てめぇ、今までこの島で何してた!?お前の味方なんて、幾らでも居るんだよ!お前は動物達に求まれてんだッ、俺らを信じて真っ直ぐ転がれやコラぁッ!!」
「…そうよ、アルマ。一緒に逃げよう!私がついてるから。ずっとついてるから!」
「サっちゃん……うんっ!!」


そして走り出す。…さって、ここいらでやっとオラの出番な訳だべ。
オラは遮るようにその列に割り込んだ。ぶっちゃけオラの事空気だとでも思ってただな?顔がそう言ってらぁ。
驚かれようと気にもしねぇ、オラはアルマジロとハチから別つように、”ミニドラゴンを押し留めた”。


「…ルーニっ!?な、何やってるのよ…ミィを放して!」
「ぎゃ、ぎゃわぁ~っ…!」
「ルーちゃん…?」

そうだろうなぁ、そういう目で見られるとは思うだ、どー見ても裏切りっぽいもんなぁ。
だども言い争ってる時間はねぇんだ。

「このミニドラっ子の足じゃおんめぇらの足手纏いだ、悪ぃがここでオラとお留守番だべ。」
「………え?」
「心配すんな、ミニドラゴン………ミィはオラがちゃんと面倒見とくだ。」
「ぎゃわぁ……。」

ミニドラゴンも自分の足が遅い事は理解できるんだろな、その場に立ち尽くした。
正直、すっげぇ可哀相なんだども、そうも言ってらんねぇ。嫌われ役ならオラが引き受けてやる。
だから、おめぇらは…さっさと逃げりゃあえぇだ。


「ルーニ……。うん、ありがとう。ミィの事、お願いね。」
「必ず迎えに来るからね、ミィちゃん。そしたらまた、いっぱい遊ぼうな、お昼寝もしような!」
「ぎゃわぁぁー!!」


アルマジロは転がって、ハチは飛んでいく。流石に早ぇ、息もピッタリだ。包囲網なんてするすると抜けていく。
そんじゃあ約束通り、コイツを守ってやんねぇとなぁ。周りは敵の動物だらけ、味方は大鳩1匹だぁ。
こりゃあ、エージェントルーニの最大ミッションだな、気合入れっべ!


「ひっさしぶりに、まほーぶっ放すかぁ~!」
「ぎゃわぁ~!!」
「…おんめぇはマスコットなんだから、見学してりゃえぇっつぅに。…一緒に暴れっか?」
「ぎゃぅっ!!」
「おっしゃぁッコラ!遅れんなよミィ、それと小僧ッ!」
「オラはメスだべっ!!」


オラはいつだって地味だども、たまにぁこんな展開も悪くねぇ。
アルマ、サチ、気ぃ付けていけや?ミィと一緒に待ってんかんな。
(Sence3へ続く)


ひとつの結末 前編(Sence1~2)
ひとつの結末 中編(Sence3~4)
ひとつの結末 後編(Sence5)

もうひとつの結末 前編(Sence1~2)
もうひとつの結末 中編(Sence3~4)
もうひとつの結末 後編(Sence5)

あとがき
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2009/11/10 05:11 | Comments(0) | TrackBack() | 日記ろぐ

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