夏。
終わりの夏、別れの夏。
島は眠りにつき、冒険者の旅路は閉ざされた。
早々に島を去る者も居れば、別れを惜しみ集まる者も居る。
その浜には冒険者達が集まり、喋り、騒ぎ、島での最後を満喫していた。
人々が集まるその浜を、遠くに眺める丘の上。
ひと気の無いその丘に、人以外の者達が集まり言葉を交わす。
その日、夜の浜は賑やかで、
それを眺める夜の丘は、静かだった。
終わりの夏、別れの夏。
島は眠りにつき、冒険者の旅路は閉ざされた。
早々に島を去る者も居れば、別れを惜しみ集まる者も居る。
その浜には冒険者達が集まり、喋り、騒ぎ、島での最後を満喫していた。
人々が集まるその浜を、遠くに眺める丘の上。
ひと気の無いその丘に、人以外の者達が集まり言葉を交わす。
その日、夜の浜は賑やかで、
それを眺める夜の丘は、静かだった。
【Summer Vacation】
~動物達の夜~
「ほんっと、賑やかねぇ…。」
「せやねぇ…。」
月と星が煌く夜、浜辺には焚き火が焚かれ、人々の喧騒が遠くこの丘まで響いてくる。
木に背を持たれ寛ぐアルマジロ、その腕の中から殺人蜂は溜息交じりに声をあげた。
「もう島を出てかなきゃいけないってのに、人間達ってばお祭り好きよね。」
「せやねぇ…。」
「いつもいつも、騒いでばかり。…それも、凄く楽しそうに。」
「ホンマやねぇ…。」
「…ちゃんと聞いてるの、アルマ?」
「んー、聞いとるよぅ、サっちゃん…?」
眠たそうに目を擦りながら、アルマは微笑みかけた。
ふぅっと一つ溜息をついて、サチも目を閉じる。
「眠たくても良いから聞いて、アルマ。」
「…うん。」
「私ね、人間ってずいぶん勝手な生き物なんだと思ってたわ。いきなり島にやって来て、人間同士で争い始めて、動物達まで巻き込んでさ。」
「…うん。」
「で、実際に出会ってみると、やっぱり勝手なのよね。島に来た目的はバラバラだし、やる気あるのかないのか分かんないし、変に友好的だったりするし。人によって全然違う、自分勝手よね。」
「…うん。」
「全然違うから、もっと色んな人に会ってみたいって思うの。一人二人出会ったくらいじゃ、人間の事を知った気になれないもの。もっと知りたいって、いつからかそう思えるようになった。」
「それは…、ウチのため?」
アルマが静かに問いかけた。
そっとその手がサチの頬に触れる、撫でるようなその手に隠れて、アルマの顔は閉ざされる。
そのまま彼女は静かな声音で告げた。
「ウチが人間やったから、人間さんの事知ろうと思ぅたの…?」
穏やかな、落ち着いた声でそうささやく。
それは”禁句(タブー)”、誰しもが知っていて、誰もが口にしなかった事。
アルマとサチを別つ現実、事実であり真実、そして結末。…そう思っていたモノ。
「初めはね。」
サチは迷い無く、答えを紡ぐ。
「初めは、アルマのために人間を知りたかった。アルマが自分達と違うトコロ、それを知りたかったし、知るのが怖かった。どれだけ違っても私は決して態度を変えない、その自信はあったし、…それでも怖かった。」
瞳を覆うように被せられたアルマの手に、サチも手を触れさせる。
「…今は?」
「今は怖くないよ。」
「…どうして?」
「人間達の事、少しは理解出来たから。」
「人間さんって、どんな生き物やったの?」
「うん、人間はね…、」
そっと、被せられたその手をずらし、笑顔で微笑みかける。
「…人間は、私達と変わらないのよ。」
「かわら…ない?」
「そう、変わらない。人間達は自分勝手な生き物だけど、私達も勝手だった。島でやる事はバラバラだし、やる気あるのか無いのか分かんないし、変に敵対的だし。ルーニは口調が変だし、ミィは可愛くて罪なぐらいだし、私はツンはしてもデレはしないって今でも言い張るし、アルマは…いつも私の制止を無視して転がるし。」
「サっちゃんの「転がるな」は、「転がって」って意味なんよ?」
「…私はそこまで、あまのじゃくじゃないから!」
ぷいっと口を尖らせて互いに笑い合う。
すがすがしく、吹っ切れた表情でサチが告げる。
「皆、好き勝手に生きてるのよね、人も動物も。私の生き方も私が勝手に決める、何があっても揺らがせない。だから怖くもない。アルマも、アルマの好き勝手に生きれば良いよ。そして、幸せになれば良いから。」
「ウチの…生きかた…?……ウチは、ずっと、一緒に……。」
…と、その時、”ドォォーン”っと大きな轟音が言葉を遮る。
それは夜空に咲き誇る大小様々な火の花火。
浜辺から打ち上げられたその花は、人々の喧騒を掻き消し全てを自身へと注目させる。
「…ぎゃわぁ…?」
側で眠っていたミニドラゴンが、寝ぼけ眼で巨体を起こす。
暗い夜空を一面に染め上げる花火を見上げ、寝ぼけ眼をパッチリ見開き歓声を上げた。
「ぎゃわぁー!ぎゃぅ~♪」
「あ、ミィ、あんまり遠くに行っちゃダメよ?」
「ぎゃーう!」
見晴らしの良い丘の先へと、嬉しそうに駆け出すミラを微笑ましく見送り、夜空と、そして浜辺へと視線を移す。
雑多な人込み、多くの人間達が思い思いに時を過ごすその浜辺、一人一人がこの島で過ごした冒険者達。
あの中には、自分達が知り合った人間も居るのかもしれない。サチはアルマに尋ねる。
「アルマは、行かなくて良いの?人間達に、お別れの挨拶も言ってないでしょう?」
「…ん、ウチはえぇんよ。」
「お世話になった人だって居るのに。」
「それでも、あっちはウチの居場所やないから。」
ぎゅっと、サチを抱き寄せる手に力がこもり、
「ウチの居場所はここ、サっちゃんの側やかんね。ずっとココにおるから、…ね?」
「…アルマがそうしたいなら。私も、一緒に、居てあげなくもないけどねっ…。」
一本の木の下で、真っ赤な顔に染まったサチをしっかり抱き寄せる。
夜空に咲いた花々に見守られ、喧騒の中の静かな時は過ぎて行った。
…
……
………
「ぎゃーわぎゃーっ。」
「それ言うなら、”たーまやー”、だべ?」
アルマジロと殺人蜂から離れた丘の先で、のんびりと寝っ転がるミニデビル。
側で花火を眺めていたミニドラゴンが首を傾げて尋ね返した。
「たーわぎゃー?」
「おー、何かおしいべ。」
「ぎゃーまぎゃー!」
「んー、離れたっぺなぁ。」
「ぎゃーわやっ!」
「微妙にくっつけりゃえぇんだどもなぁ。」
チロチロと小さな舌を動かし、必死な表情のミニドラゴン。
丸いおててをブルブルと振り回しながら、大きく叫ぶ。
「たーまやぁっー!!」
「あ、言えたべ。」
………
……
…
「………って、アルマ今の聞いた!?ミィが喋った!ミィが人の言葉喋ったよ!」
「………すー、すー…。」
「…って、こんな時になに寝てるのよ!?今さっきまで起きてたじゃないの!」
「………んー、むにゃむにゃ、…おはようサっちゃん。…あれぇ、もう夜?」
「…ねぇアルマ?念の為に聞くけど、私とさっきまで話してたよね?」
「え。ウチ、夕方からずっと寝てたよぅ?」
「な、…んですってぇッー!!?このばかッ、ばかアルマっ!!」
「え、えぇー、なんで怒られるん!?」
その日、夜の浜は賑やかで、
それを眺める夜の丘も、賑やかだった。
「たーまやぁっー!!」
「サっちゃん今の聞いたっ!?ミィちゃんが人の言葉しゃべっ―」
「―知ってるっ!!」
~座談会~
「こんにちわぁーっ、アルマジロのアルマやよぅ~。」
『殺人蜂のサチよ。』
【たーまやぁっ~♪(たまやー!です~。)】
『いや、”たまや”は名前じゃないから!あなたはミラだから!!』
【たーまやぁ~?(たまやー?じゃないですー?)】
『いや、疑問形にしても意味通じないからね?…結局他には喋れないのね。』
【ぎゃぅ!(はいです!)】
「と言う訳で、今日も元気に始まったんは”やり残した事をやっておこう”のコーナーやよ!略してのこおこ!」
『前回と略称が違うのはどうでも良いんだけど、やり残したことって、サマバケ?』
「イベント参加全般やね。ぜぇーんぜん参加してへんかったかんね。」
『私達が参加したイベントって言うと………星見祭と紅葉一番街、…だけか、確かに少ないわね。』
「とりあえずこれで、やり残した事はおしまいかなぁ。レンタルとかは、技量が足りてへんかんねぇ…。設定集とか、需要あるんかなぁ…?」
『じゃあ次はエンディングを書き始めるのね。今回すっごく最終話っぽい話だったけど、ちゃんと本番用に別のセリフ考えてるの?』
「え?」
『え?』
「これが最終話で…」
『却下。』
(中の人の呟き)
こんばんわ、背後です!
結局、時間優先で微妙な絵を描きました。一般受けしない絵柄なのは分かっているんですけど、描き上がらないよりはマシですよね。
そう言えばミィちゃんには「5更新毎に使える言葉が増えていきます」設定が最初の頃に付いていましたっけ。
一番最初に発した言葉は”たまや”でした。…うん、喋れて良かったね。
エンディングはこれからポツポツ書いていきます、載せられるのはかなり先になると思いますが…。
ちょっとしたサプライズ演出をくっ付けようかなぁと企んでますが、それが絵でないのは確実です。久しぶりに描いて、もう力尽きました。
他に思いつく事がなければ、それまでブログの更新は無いかと思います。
大分先の話ですが、よろしければまたお越しください。それでは良い夏を!
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