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2024/11/24 04:37 |
もうひとつの結末~前編~
島は告げる、その終わりを―


【secne1】
~おわりの はじまりの きもち~

しまが、うまれかわるのだと、ききました
だれからきいたのか、わかりません
だけど、だれもがしっていました

わたしも、しっていました

わたしたちのしまが、うまれかわることを




「島が…生まれ変わる…?」


わたしたちはとつぜんに、それを知りました。
どうして…?それは、わかりません。
でも、こころのなか、わたしの想いが、それが現実だといっています。


「起こっちまうモンはしゃあねぇべ、どうにもなんねぇ。」
「…ま、待ってよ…私達、まだ何も知らないのに…!何も知らないまま…終わってしまうの?」
「終わるんじゃねぇべ、生まれ変わるんだぁ。ぁー、たぶん【輪廻】っつぅことだべ?」
「もぅ、どっちだって良いわよそんなのっ!!ねぇアルマ、どうしよう…!」
「………んー。困ったねぇ~…。」
「なにのんびり構えてんのよ、アンタはぁっ!?」


おねえちゃんたちのお話、わたしにはむずかしいけど。
でもわたしにもわかります。
きっとそれは、おこってしまうことなんだって。
とめられなくて、とめちゃいけないことなんだって。


「何か…方法は無いのかな。…ねぇ?」
「つってもなぁ…。えらい人に聞いてみるしかねぇんでねぇ?」
「偉い人?…そもそもルーニって、誰から送り込まれたスパイだったの?」
「す…、スパイじゃねぇだっ、ただの監視だぁ監視っ!」
「…それって同じじゃない。」

「ぎゃわぁ~?」
「スパイってのはね、ミィちゃん。料理にかけると辛くてひぃ~ってなるアレの事やよ。」
「ぎゃぉ~!」
「それはスパイスだからぁっ!!」


サチおねえちゃんとルーニおねえさんは、言いあらそってるけれど。
あんまり、おこっているようすじゃなくて。すこし、こまったようすです。
わたしも、いっぱいいっぱい考えたけど、何も思いつきません。
アルマおねえちゃんは、…ちょっと、ふしぎなようす。
サチおねえちゃんとルーニおねえさんを見る瞳が、なんだかふあんそう。


「ぎゃわぁ…?」
「………ん?どしたの、ミィちゃん?ウチの顔面白い?えへへ~。」


わたしが、おねえちゃんを見ても、いつもの笑顔で返してきます。
でも、わかるんです、わたし。おねえちゃんが、ふあんそうだって。
どうしたのかな、とてもしんぱい。わたしも、ふあん。


「アルマー、ミィー!とりあえず森に戻ろう、大人の動物に話聞いてみようよ。」
「だなぁ~、子供だけでこんなトコまで来るからいけねぇんだべ。」
「アンタだって子供じゃない、ルーニ!」
「おんめぇらとは仕事の質が違うんだぁ、尊敬すりゃえぇべ!」


元気に言いあらそいながら、おねえちゃんたちが歩いていきます。
アルマおねえちゃんも、わたしを向けて手をさしだしてくれました。
その手をぎゅっとにぎって、いつものようにおててをつないで歩きます。

「ぎゃわぁ…。」

いつのまにかわたしは、アルマおねえちゃんのその手を、つよくつよく、にぎっていました。
いたかったらごめんね、おねえちゃん。



【Secne.2】
~真実と 現実からの 逃走~

島の1階の森
こいつらの故郷だべ
そろそろ真実っつぅもんを知らなきゃなんねぇ

恨むんだったら、オラ以外にしてくんろ?
おめぇに恨まれたんじゃ寝つきが悪ぃべ


森へと帰り着いたオラ達を待っていたのは、やっぱりあの動物だったべ。


「おいコラっ、帰ってきやがったなアルマ!」
「大鳩兄ぃさん!」


嬉しそうに、アルマジロが走り寄って行く。
唯我独尊、そんな態度で森の中に佇む大鳩、顔は怖ぇけども子供に人気らしいべ。あのアルマジロっ子にとっちゃあ、兄っぽい動物らしいらなぁ。
そんな様子を暫く眺めてから、ハチっ子が声を掛けた。


「あの…大鳩さん、この島が”生まれ変わる”事について聞きたいのだけど。」


その声を聞いて、はしゃいでいたアルマジロもピタっと止まる。
アルマジロ、ハチ、ミニドラ、3匹の不安気な視線を受けて、大鳩が威勢良く喋りだす。

「おうっ、つぅか説明すんのも面倒だなオイッ!。」

随分面倒くさそうな態度だっぺな、まぁいつもあんな感じだども。

「要はリセットって事だな、コラ。この島の存在がまるまる、新しく作り変えられるって訳だ!」
「…えーっと、良く分からないんだけど。…私達消えちゃうの?」
「消えはしねぇぜ、記憶は消えるがな。誰1匹、消えやしねぇだろ。この島の動物はな。」
「………。」
「…それじゃあ、また皆で暮らせるの?何も怖がらなくて良いのよね?」
「………サっちゃん………。」


アルマジロは黙ったまま、顔を俯けた。何かを言いたそうに、でも本当は言いたくなさそうに。
んまぁ、そうだろうなぁ。なんつったって、アイツはこの島の動物じゃなくて……

「…良く聞けや、サチ?この島の動物じゃないヤツらとは、これで―」
「――サっちゃんっ!!」

大鳩の言葉を遮って、アルマジロが叫ぶ。

「サっちゃん。ウチはね…この島の動物や無いから…、一緒に生まれ変わる事は出来へんの。ウチは、”人間”やから。…もう、一緒に居られへんの。」

言葉を振り絞るように、ゆっくりとそれを告げる。それは真実で現実だぁ、逃げようがねぇ。
ハチっ子だってそりゃあ理解してたろなぁ、必死に目を背けようとしてた訳だ。
だども…、直接本人の口から言われりゃ、背ける事は出来ねぇ。
大鳩も顔を歪ませ、ミニドラも泣き出しそうだ。だぁれも笑ってられねぇ、いつも笑顔なメンツだったのになぁ。


「しっかり理解しているようだな、アルマ。」
「………鹿親分?」


その沈黙を打ち破ったのは、新しい動物の声と沢山の気配だったべ。
森の奥から悠々と現れる鹿親分、えらぁい動物で、アルマジロと父だか兄だかみたいなモンだぁ。
そんで周りの木々には色んな動物達の気配、囲まれてんな。どれもこれも、友好的…とは言えねぇべ。

「…うん、理解しとるよ、サっちゃんとも話し合ったから。」
「ならお前は、島が生まれ変わるその前に――」


――人の世界へ行け


鹿親分はそう告げた。
島が生まれ変わるっつぅ事は、それまでの期間は消えてるって事だな。この島に残って安全な訳がねぇ。
それは誰にだって分かる事だべ、おそらく人間であるアルマジロにだって。
人の世界へ行かなければ、…命の保障なんてどこにもねぇ。

アルマジロもハチも、本当は分かってたハズだべ。ミニドラはよく分かって無さそうだども…しゃあねぇな。
だがボサっとしてる暇はねぇ、周りには鹿親分の配下が迫ってんだ。


「…可愛い妹分のお見送りにしちゃあ、随分手荒な送迎だなぁ、アぁ?鹿よぅっ!?」
「まさか邪魔をするつもりじゃないだろうな、大鳩?早く連れ出さないと、手遅れになるぜ。」
「…分かってるさ、コラぁ…。けどな、オレは一瞬一秒でも長く、アルマをこの島に居させたい。」
「詭弁だな。あまりにも危険すぎる。一瞬一秒でも早く退避させるべきだろう、鳩よ?」
「…っるせいっ!テメぇなんかにオレの考えを理解させるつもりはねぇぞコラッ、掛かってこいや!!」


二匹で激しく言い争ってんなぁ…、大鳩は今にでも飛び掛りそうな勢いだべ。
じわじわと狭まる周囲の気配。大鳩が前に出ても、一匹じゃ鹿親分を威嚇するのがやっとだ。


「アルマ、島が生まれ変わるのは明日の夕暮れ時からだ、その時に迎えに行く。それまでに…やる事済ませとけよ!?」
「で、でも大鳩兄ぃさん、ウチらだけじゃっ…!」
「何言ってやがんだ馬鹿!てめぇ、今までこの島で何してた!?お前の味方なんて、幾らでも居るんだよ!お前は動物達に愛されてんだッ、俺らを信じて真っ直ぐ転がれやコラぁッ!!」
「…そうよ、アルマ。一緒に逃げよう!私は、少しでも長くアルマと居たい!…一緒に居たいよ!」
「サっちゃん……うんっ!!」


そして走り出す。…さって、ここいらでやっとオラの出番な訳だべ。
オラは遮るようにその前に割り込んだ。ぶっちゃけオラの事空気だとでも思ってただな?顔がそう言ってらぁ。
驚かれようと気にもしねぇ、オラはアルマジロとサチを押し留めて、そこに仁王立ちする。


「…ルーニっ!?な、何やってるのよ…そこを退いて!」
「ぎゃ、ぎゃわぁ~っ…!」
「ルーちゃん…?」

そうだろうなぁ、そういう目で見られるとは思うだ、どー見ても裏切りっぽいもんなぁ。
だども言い争ってる時間はねぇんだ。オラにはオラの仕事っちゅうもんがあるっぺな。

「悪ぃがおんめぇらを行かせる訳にはいかねぇべ。これも仕事だぁ。」
「…ルーニ。あんた、本気で…?」
「オラじゃおめぇらには勝てる訳がねぇ、だどもオラのまほーは足止めに特化してんだ。分かってんな?」
「そんなの嫌やよ、ルーちゃんっ!」

…気まずいなぁ、あぁ気まずいべ。嫌われ役っつのは嫌なもんだ。
だどもオラは現実主義ってヤツなんだぁ、想い出よりもアルマジロの命を優先してぇ、そう思っちまう。
だからおめぇを、意地でも通さねぇ!自慢のまほーでヘナチョコにしてやりゃあー!

…と、勢い込んだ時だったべ。


「ぎゃ・わぁぁぁぁっ!!!」


突然、ミニドラゴンのお腹が降って来ただ。文字通りの意味だべ?
オラの体格じゃんなモン耐えられる訳ねぇってっ、あっちゅう間に潰されてペチャンコだぁ。
ミニドラゴン…ミラののしかかり。アルマジロとハチに気を取られすぎて全くの不意打ちだべな。


「ぎゃぅ、ぎゃわぁぁ!」
「み、ミィちゃん?先に行ってって…そんなのっ…!」
「ぎゃわぁぁ…。ぎゃう~!」
「私が…アルマの側に居る方が良いって、そう言うの…ミィ?」

オラにのしかかりながら、ミニドラゴンがぎゃうぎゃう叫ぶ。まぁ、言いたい事は分かるな。
ミニドラゴンの足じゃ足手纏いだ、この包囲から逃げ切れるハズはねぇ。ミニドラ自身も理解してるんだろな。
だから…ここでオラを押し留める事を選んだ訳だ。
臆病で泣き虫なドラゴンだと思ってたら、…意外と、頑張るなぁ、コイツ。オラよりずっとカッコえぇ。


「ありがとう…ミィ。大丈夫、アルマは私が守るからね。」
「ミィちゃん…。絶対に、絶対に会いに来るから!ちゃんと会いに来るからね…!」
「ぎゃわぁぁー!!」


アルマジロは転がって、ハチは飛んでいく。流石に早ぇ、息もピッタリだ。包囲網なんてするすると抜けていく。
対してオラは、ミニドラゴンのプニプニお腹に潰されてそろそろヤバイ気ぃしてきたトコだな。
あぁ…こいつののお腹って、プニプニしてて気持ちえぇなぁ…。

「っへ、結構やるじゃねぇか、ミィ!」
「ぎゃわぁ~♪」
「おぅ、その根性はいっちょ前だぜオイ!いっちょ暴れっぞこらぁーー!」
「ぎゃおーーー!!」
「だ、だべぇ~~……。」


二匹で叫んで気合を入れる。オラもうっかり声が漏れる。
ま、オラは結局最後までこういう扱いだったけどなぁ。別に後悔してねぇべ。
オラ達はおめぇの事を忘れちまうけんど、おめぇはずっと覚えとけよな。
だから、生き延びてくんろ、アルマ?
(Sence3へ続く)


ひとつの結末 前編(Sence1~2)
ひとつの結末 中編(Sence3~4)
ひとつの結末 後編(Sence5)

もうひとつの結末 前編(Sence1~2)
もうひとつの結末 中編(Sence3~4)
もうひとつの結末 後編(Sence5)

あとがき
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2009/11/10 04:53 | Comments(0) | TrackBack() | 日記ろぐ

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