~22日目、サチの日記より~
~前日のあらすじ~
雑草5匹を侍らして、私達に襲い掛かってきたもの
それは人間の姿形をした変態だった。
もちろん私とアルマで軽くあしらってやったわよ。
意外に手強くて苦戦はしたけど、それはどうでも良い話。
問題なのは、その後彼らが語りだした話の方だから。
雑草5匹を侍らして、私達に襲い掛かってきたもの
それは人間の姿形をした変態だった。
もちろん私とアルマで軽くあしらってやったわよ。
意外に手強くて苦戦はしたけど、それはどうでも良い話。
問題なのは、その後彼らが語りだした話の方だから。
マスターだか先生だかご主人だかがいそいそと服を着込むその脇で、助手なのかメイドなのか分からない少女が説明を続けていた。
わざわざ黒板を掘り出す割には、たった3行分で事足りそうな説明を。
つまりは、この島にエキュオスなる生き物が潜伏していること。
そのエキュオスがマナを島内にばら撒いていること。
…そしてそのマナ吸うと、別の生き物に変わってしまうってこと。
案の定、アルマは何も分かっていない様子で首を傾げている。
「なぁサっちゃん、それってエキュオスって動物が越して来たってことなん?友達増えるかなぁ~。」
能天気な笑顔を向けてくる。
そんなアルマをよそに、私は複雑な心境で今の話を思い直した。
私はエキュオスなんて存在は知らない。
この島で暮らしてきて、そんな動物は見ていないし、話も聞いてない。
だから恐らく、あの変態達同様外からやって来たって事でしょうね。
どこか遠くの、別の島か何かから。
それにマナなんてモノも知らない。
何だか魔力っぽい響きだけど、そんな雑学を蓄えていられるほど文学少女でもないの。
そう見えたのならごめんなさいね、私ってば雰囲気からして知的だから。
そして何より、生き物が別の生き物に変化する。
そんな現象を、私は知らなかった。
変態とその助手は、説明を終えると足早に走り去っていった。
その後ろを5匹の歩行雑草がモッサモッサと追いかける。
確かあの変態は、マナで生まれた変な生き物を捕獲しに来てるのよね?
だったらあの雑草達も、変質した変な雑草なのかしら。
まさか…ね。
そうだとすれば、その雑草達と同様の暮らしをしている私たちまで、変わってしまうことになる。
自分達が自分達でなくなるなんて、考えたくないもの。
それがどれだけの危険性を秘めてるのか、アルマは全く理解していないようだし、わざわざ諭して怖がらせようとも思わないけど。
だけど…、”エキュオス”なんてモノには係わりたくない。
私は純粋にそう思った。
「なぁサっちゃん、今度はどこ行こっかぁ~?」
やはり能天気な表情でアルマがたずねてくる。
これが人間の世界なら、さっきの変態相手に慰謝料ってのを要求できたでしょうに。
あぁ、私だって人間については多少は勉強してるのよ。…まぁ、ただの暇つぶしにね。
そんなどうでも良いことを考えながら、アルマの後について飛んでいく。
次の行き先は川に沿って上流へと登る事になったみたいで、アルマは少し転がり難そうにしてたけどね。
…そうね、エキュオスなんかには関わらないでいい。
その内あの変態がとっ捕まえて島外にでも連れ出すんでしょう。
私はただ、アルマの動物と人間さん皆仲良し計画の手伝いでもしてればそれで良いの。
私達は外から来た他の生物や、招待されたとか言う冒険者達とは違う。
昔からこの島に棲んでいるってだけの原住動物。
島のアチコチで起こっている事件は蚊帳の外、当事者にとって私達はエキストラ。
今の私は、それが当然だと思ってた。
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