~7日目の調査報告書より~
潜入調査6日目調査報告書やよ
大鳩兄ぃさんは強かったんよぉ…。
昨日は大鳩兄ぃさんに突っつかれて、気ぃ失ってもぅたんやけど。
目ぇ覚めたら遺跡外の宿屋さんで眠っとったんよ。誰かが運んでくれはったんかなぁ?
大鳩兄ぃさん、今度は負けへんかんね!
もう1度同じ道転がって、挑戦しにいくんよ~。
…それにしても、今頃森の皆はどないしてるんやろねぇ。
森を出てから1週間、ウチちょっと寂しいんよぉ…。
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そこは深く暗く、そして生命に満ちた森の最奥。
木漏れ日と木々の間から、1匹1匹と、様々なケモノ達が集まってくる。
けれどその表情に笑みはなく、皆真剣な面持ちで顔を突き合わせていた。
「あー…全然ダメだな、弱っちいぜ、アルマは。」
沈黙の中、木の枝に留まっていた一羽の大鳩が声をあげた。
大鳩「あんなんで人間に勝てんのかよ、あァ?やっぱアルマなんて前線から外すべきだぜ、潜入調査なんてさっさと止めさせ―」
「―その割りには満身創痍のようじゃのぅ、…鳩よ?」
捲くし立てる大鳩の言葉を、歩行仙人掌が遮った。
大鳩「あァん…?喧嘩売ってんのか、歩行仙人掌の爺さんよぉ!」
歩行仙人掌「ふぉっふぉっふぉ、そんなつもりはありゃせんよ。」
長い髭を擦りながら、歩行仙人掌は静かに呟く。
歩行仙人掌「成長しとるんじゃよ、あの娘っ子は。…ワシら島のケモノにはありえん速度でのぉ…。」
ドンッ!
刹那、鈍い振動。
歩行仙人掌の座っていた地面の直ぐ隣に、大きな穴が開いていた。
突き刺した嘴を穴から抜き出し、大鳩はさらに鋭い眼光を歩行仙人掌へと投げ掛ける。
大鳩「それ以上アルマを人間扱いしてみろ。…突き殺すぞコラ。」
歩行仙人掌「…ふぉふぉふぉ、血気盛んな事じゃて。」
「…おっと、それぐらいにしときな大鳩。ここは喧嘩する場所じゃねえぜ?」
ざわめくケモノ達を制したのは、1匹の鹿の声。
その一言で森は静まり返り、ケモノ達の視線は鹿へと集中する。
大鳩「もう1度言うぜ、鹿。アルマは人間とは戦えねぇ、潜入調査なんて止めさせろや。」
鹿「そいつは出来ないな、大鳩。人間に怪しまれずに街に入れるのはアルマだけだ。人間達の動向を掴むには必要な人材だろう?」
大鳩「…本当にそれだけかよ、鹿。てめぇ別の目的でアルマを利用してるんじゃねぇだろうな…?」
鹿「…それだけだぜ、大鳩。俺の目的はプライベートな問題。お前達にも、ましてやアルマにも関係ない。」
鹿「そうとも。アルマは”ジャングルの王”には成れないさ。」
小さな小さなその呟きは、誰に聞かれる事無く深い森の闇へと消えて行った。
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