~9日目の活動報告書より~
いい加減”報告書”の内容から離れ過ぎてる気がしてならない。ホントにどうしよう。
いい加減”報告書”の内容から離れ過ぎてる気がしてならない。ホントにどうしよう。
9日目調査報告書やよ
今日は平原を探索しとるんよ。
この通り道には一本の木があってな、そこにはウチのお友達が棲んどんの。
ほら、近づいたらブゥゥーンって羽音が聞こえてくる。
やっぱり今日の相手はあの子なんやね。
「来たわね、アルマ!能天気アルマの割には、ちゃんと遅刻せずに来れたじゃないの。」
そう、木から飛び出してきたこの子がウチのお友達。
アルマ「なぁ、ハっちゃん。」
殺人蜂「…その呼び方はやめて、っていつも言ってるでしょ?」
アルマ「じゃあ、バっちゃん?」
殺人蜂「…もっとイヤ。いい加減、会う度にそのボケかますの止めなさいって。」
ふふっ、呆れた顔でコッチ見てくるんよ、繰り返しは基本やのにねぇ。
アルマ「ん、ほなサっちゃん。あんな…」
殺人蜂「…何よ、能天気なクセに神妙な顔して?」
聞きたい事があるんよ。
サっちゃんだけやのぅて、この島に暮らす動物達、皆に聞きたい事。
アルマ「あんな…。サっちゃんは、人間さんらの事、嫌いやの?」
そう、ウチが聞きたかった事。
ウチは人間さんらの事嫌いやないよ、けど大鳩兄ぃさんは嫌いやゆぅてた。
動物達は皆、人間さんの事が嫌いなんやろか。
人間さんも動物達も、皆で一緒に暮らす事は出来へんのやろぅか。
…ウチ、知りたいんよ。
殺人蜂「…何を言い出すかと思えば。馬鹿ね、私は殺人蜂よ?人間なんてタダの獲物に決まってるじゃないの。」
アルマ「そんな事あらへんよ。だってサっちゃん、…人間さんを殺したりせぇへんやないの。」
そうやよ、サっちゃんは人間さんを殺したりしてへん。
それやのに殺人蜂って名前が付いとるんよ。
名前の由来なんて、誰も知らへんかった。ただそう言う決まりやってだけ。
だからウチ、サっちゃんの事「殺人蜂」やなんて呼びとぅない…。
殺人蜂「そ、それは偶々よ。私の針にはヒトを殺せるだけの毒があるの、だから私は殺人蜂なの!」
アルマ「でも、サっちゃんはそんな事せぇへんよ。えぇ子やもん、ウチ、ちゃんと知っとるよ。」
知っとるよ、とってもえぇ子やもん、優しい子やもん。
けど、サっちゃんは直ぐには言い返してこぉへんかった。
じっと俯いて、何かを呟いとる。
殺人蜂「……さい……うるさい。うるさいっうるさいっうるさいッ!!」
大きな叫び声。
殺人蜂「私はヒトを殺せるの、だから殺人蜂なの!だったらヒトを殺さない私って何よ!?私は何の為に存在してるワケ!?」
殺人蜂「アルマのクセに!相手を殺すってのが、どれだけ怖い事かも知らないクセに!」
殺人蜂「何時もずかずか踏み込んで来て!アンタだって、私に刺されたら死ぬのよ!?怖いでしょう?怯えなさいよ!!」
殺人蜂「私の苦しみなんて分からない、アンタみたいな甘ちゃんには分からない…!」
殺人蜂「アンタなんて…、私に刺されて死んじゃえば良いのよ!!」
近づいてくる、大きな針をウチに向けて…。
アルマ「違う…、ウチはただ、サっちゃんのこと……」
……サっちゃんのこと、大好きやって……
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