~24日目、サチの日記より~
サチ日記
~明日の前振り~
遺跡外へと帰る道すがら、
アルマが一枚のチラシを手に話しかけてきた。
「紅葉一番街」
そう書かれたチラシに、アルマは瞳を輝かせて…
遺跡外へと帰る道すがら、
アルマが一枚のチラシを手に話しかけてきた。
「紅葉一番街」
そう書かれたチラシに、アルマは瞳を輝かせて…
「…紅葉一番街?人間たちの催し物か何か?」
「色んなモン売ったり買ったりするんやって。お友達にチラシ貰ったんよ~。」
「ふ~ん…。」
受け取ったチラシを眺め見て、私はぼんやり考えていた。
”お友達”、ねぇ…。
アルマの口から聞くその言葉に、胸のどこかがチクチクする。
それでいて嬉しいような、羨ましいような…そんな気持ち。
…まったく、私は何をヤキモチしてるんだかね。
「ウチらも行こうやっ。そいで甲羅売るの、いっぱい転がり仲間増やすんよ~!」
自前の甲羅を次々と取り出して転がっていく。
そうよね、アルマは人間と動物達を仲良くさせたいんだもの。
このマーケットぽいイベントに参加するのも当然か。
私だって…、出来る事なら人間と仲良くしたい。
だけど、今更どうやって接すれば良いのか分からないもの。
人間は、…私を怖がるだろうから。
「…そう。それじゃあ私は近くの森で待ってるから――」
「――そいでな!ウチは甲羅作らなアカンから、サっちゃんは売り子さんやってぇな?」
「……はぁっ!?」
私の言葉を遮るように、アルマがとんでもない事を口走る。
パクパクと口を開いて、私はどう言い返そうかと迷っていた。
恐らく今の私は、大層間抜けな顔をしてたんでしょうね。鏡がなくて良かったわ。
……って、私が売り子っ!?
「ちょ、ちょっと待ってよアルマ、何で私がそんなこと…!」
「だってサっちゃん、人間さんと話す時恥ずかしそうにしてるもん。いつもウチの後ろから話しとるだけやし。」
…恥ずかしそう?
何言ってるのよこの子は。
私はただ、人間に怖がられるのが嫌で、だから近づきたくなくて…。
それでアルマの後ろに居ただけ…で……。
………私、恥ずかしそうにしてた……の…?
「せやからな、この機会に人間さんに慣れてもらうんよ!いつまでもウチに頼ってたらアカンかんねっ、サっちゃん一人でも、人間さんと話せるようにならな。」
「………べ、別に、頼ってなん、か…。」
頭の中がグルグルと回ってる。
恥ずかしい?人間と話すのが?嘘よ、そんなはずない。アルマが勘違いしてるだけ。
この子は直ぐに突っ走って本質を見失うから、いつもいつもいつも。
だから私が恥ずかしがってるなんて、そんな、そんなハズは……。
「はい、決まりや!明日は頑張ろうな、サっちゃん?」
にっこりと笑うアルマの顔を見て、私は何が何だか良く分からなくなっていた。
…私は人間が怖い。
人間に怖がられる事が怖いの。
そうよ、恥ずかしがってなんかいないんだって、明日は証明してやるんだから…。
そう…よね、…私?
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