~6日目の調査報告書より~
潜入調査6日目 調査報告書やよ
「突き殺すぞコラァ!」
遺跡のお昼頃、そんな叫び声が平原の奥から響いて来たんよ。
その声には聞き覚えがあったかんね、ウチも急いで向かってん。
そこには1匹の大鳩さんが羽ばたいとって、傷ついた人間さんらが逃げ出しとった。
大鳩さんはその人らに唾吐きつけて、悠々とウチの目の前まで降りて来たんよ。
大鳩「遅ぇぞコラァっ!いつまで待たせんだ、あァ!?」
そう言って鋭い眼光を浴びせてくるケモノさんは、大鳩兄ぃさん。
ちょっと怖そうに見えるけど、悪いケモノやないんよ?
ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ人間嫌いな、えぇケモノやの。
大鳩「ったくよォ、人間ってのはドイツもコイツも鳩をナメめやがって。気に喰わねェよなァ、アルマ!?」
ウチは人間さん嫌いや無いけど、大鳩兄ぃさんは決まってこう言うんよ。
大鳩兄ぃさんだけやなくて、何匹かのケモノ達は人間さんの事嫌ってんの。
…ううん、ホンマは人間さんが好きやってケモノ、あんまりおらへんのよ。
毒百足ちゃんはオスなら皆好きみたいやけどねぇ…。それでもちょっとだけやよ。
大鳩「潜入調査なんてかったりィ事せずに、力ずくで追い出しゃ早ェのになァ。鹿の野郎も何時までヌルイ事やってんだって。」
ウチも人間さんらに、偽島のケモノ達が虐められてんのは見とぅないよ。
せやけど…、ケモノ達が人間さんらと戦う姿も、見とぅないんよ。
なぁ鹿親分、ウチ、どないしたらえぇんやろう…?
人間さんの事好きになっとるウチは、悪いケモノさんなんやろか…。
大鳩「…おいアルマ、聞いてんのかコラ?さっさと今日の訓練始めっぞオイ!人間共を追い出すためにもオメェが強くなきゃ困んだよ、あァ!?」
なぁ鹿親分、ウチに訓練させとるのは、人間さんらを追い出す為やの…?
せやったらなんで、ウチを人間さんらの所に向かわせるんよ。
ウチ、日に日に人間さんらの事好きになってんのに。ヒドイやないの…。
大鳩「…アルマ?聞けってオイ!何だかオレが虐めてるみたいじゃねェかよ、あァ!?勘違いされたらどうすんだよ!腹痛ぇのか、顔蒼いじゃねェかコラ!」
…それとも、ウチを人間さんらの仲間にさせたいのん?
ウチが、人間やから。
…そないな事は、ないやんね。
ウチはケモノやよ。この島で生まれて、この島で育って来たんよ。
ずっとずっと、この島のケモノ達の味方なんやから…。
大鳩「おーいアルマー。いい加減反応してくれよコラぁ、寂しいじゃねェかよオーイ。」
アルマ「…せやね、訓練しよか大鳩兄ぃさん。人間さんらより強ぅならなあかんもんね。ウチ頑張るんよー!!」
大鳩「へ?………あ、あァ、頑張んぞコラぁ…?」
…そうやよ、ウチはケモノ達の味方なんやから。
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